救命ボートの男

救命ボートの男

ある日、疲れきっていた私の前に救命ボートが現れた。

その救命ボートは、「僕が、ずっと乗せていってあげるから、がんばらなくていいよ。」と言ってくれた。「何があっても守る」と…私は彼を純粋に信じ、救命ボートに身を委ねた。

とても幸せな日々だった。波は穏やかで、とても綺麗な景色を見ながら、のんびり流れていて、とてもとても幸せだった。

「ずっと一緒だよ」

「綺麗な景色をこれからも一緒に見続けよう」と・・・

けど、このときの私は、絶対という言葉は、永遠とイコールではないということを知らなかった。

波はいつまでも穏やかではないし、救命ボートも休まず私を乗せていたら、クタクタになってしまう・・・

私は、何も気づかなかった。のんきに綺麗な景色ばかり見ていた私は、波が荒れはじめたことにもそれを必死に耐えていた救命ボートの空気が抜けてきていることにも、救命ボートが綺麗な道から外れようとしていることにも…

私が気づいたのは、救命ボートに大きな穴が空き、川に放り出されてからだった。
泳げない私は溺れながら彼を恨んだ。

「一緒に旅をしよう。何があっても君を守るから」その言葉を信じ、彼が望むまま満たされた収入、住み慣れた家、お世話になった人たち、全てを捨てて救命ボートに乗った。

彼に出会わなければ、愛さなければ、何もかも失わずにすんだのに…全てを彼のせいだと恨んだ

立っているのかも、座っているのかもわからないくらい放心状態だった。体の中にこんなに涙があることを知った。生きてきたなかで一番幸せな時間から次の瞬間、一番辛い時間になった。

そんなとき、【自分に起きた結果は100パーセント自分の責任である】この言葉にであってやっと気づくことが出来た・・・

本当に失ったものばかり?本当に何もかも失ってしまったの?本当に彼のせいだけだったの?

彼と出会わなければ、あの幸せだった時間はなかった。あの時間には一つの嘘もなく、確かに彼を愛していたし、愛されていた。世界で一番幸せだって、胸を張って言えた。きっと、これからの人生この人よりも素晴らしい人と出会うことがあると思う・・・でも、この人でいい!私はこの人じゃないとダメだと言えた。

失ったものばかり?与えてもらっていたものは、失ったものなんかよりもずっと素晴らしいものだったのかもしれない。

全てを失い、毎日泣いてた時、そばにいて励ましてくれた人たちがいた・・・なんどもなんども話を聞いて、完全に座り込んでしまった私を、立たせようとしてくれた人達・・・

大切なものはちゃんと残っていた・・・

本当に彼のせいだけだったの?ここまでなんで気づかなかった?彼がこんなことをしてしまった理由は?

もしかしたら、彼をこうさせてしまったのは、私なのかもしれない。彼が起こした事件に私は関係無いと、ただ逃げていなかった?

辛い経験は、沢山の学びをくれる。

きっと、180度変わったというよりも、180階上に登ったように…

今の私に必要なものを掴むために自分の足で歩き始める気持ちとキッカケができた。

確かに、本当に辛かった。本当に苦しかった。けど、彼にはもう恨みはない。

感謝しています。

私も泳ぐことが出来たら、救命ボートに穴をあけることはなかったかもしれない。一緒に、荒波を乗り越えもっと先の綺麗な景色を見れたかもしれない。

もし、綺麗な道から外れようとしていることに気づけたなら…

大切な人を沈ませずに助けることが出来たかもしれない。自分の人生を全て委ねるだけでなく、しっかり自分で歩いていたら、泳げない水の中に放り出されるだけでなく、流れを変えることができたかもしれない。

そして、絶対イコール永遠とは違う。
絶対と言っていた時に、全くの嘘はなく本当でも、それは永遠とは違う。
人の気持ちも、状況も生きている限り変わっていくもの。

私に起きた結果は、すべて私が選択し、導いた出来事。

【MORE LOVE】
幸せは、救命ボートに乗って楽に終着地までつくことではない。
そして、絶対は永遠とは違う

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